山行記録にもどるホームにもどる



3年ぶりの摩耶山老婆谷(ばばだに)



スポンサード リンク




平成23年10月9日(日)  メンバー 私だけ

青谷橋バス停〜青谷道〜行者堂〜老婆谷〜摩耶山掬星台〜星の駅

2万5千分の1地形図「神戸首部」を参照すること。


3年の間に老婆谷に変化は? A.ありませんでした

 今から4年前の、平成19年の大晦日も迫った12月24日、青谷道行者茶屋跡から天狗道へ至る「行者尾根」を登ったことがある。天気も展望もよく爽快な山登りだった。そのとき垣間見た老婆谷は落ち葉が積り、暗く薄気味悪く感じた。

 そして次の年の4月、なぜだか老婆谷を登りたくなった。予想通りの薄暗い谷道で、砂防ダム建築時に通されたのか、それ以前からあったのか分からないが、明確に残る道型には落ち葉が積り今は誰も通っていないようだ。谷の右岸をだいぶ登ったところで道を失い、獣道を辿り西側の尾根(行所尾根ではない)に出てしまった。最後は岩場を攀じ登り、天狗道脇の方位盤のある展望所に飛び出してしまった。尾根に出てからの展望はよく、一応は満足した。

 だが老婆谷完全遡行の願望は醒めず、翌月5月に再挑戦し、ようやく成し遂げた。六甲山系には雄大な滝を楽しめるが人の命を時々吸い取る西山谷のように人を寄せ付けない怖い谷がある。だが、ここ老婆谷は名前のように老婆でも楽に登ることができるが、残念ながら滝はないし砂防ダムは多いし、そのうえ展望皆無なるがゆえに人を寄せ付けない谷だ。

 摩耶山上への登山ルートは数えきれないほどあり、一番楽なのは「まやビューライン(ケーブル+ロープウェイ)」なのは周知の事実だが、私の経験から二番目に楽なのはこの老婆谷で、今日の目的のまやビューライン年間パスポート3,000円を摩耶山掬星台の星の駅で求めるには最適のコースだ。


老婆谷の欠点は登山口があまりにも奥にあることだ

 天狗道、地蔵谷道、黒岩尾根の実質的な登山口は布引貯水池のさらに奥、市ケ原の桜茶屋のさらに奥にあるように、この老婆谷の登山口も市街地から青谷道を40分ほど歩いた行者茶屋跡にある。車は無理だがバイクなら入れるし、電気も通っているし、そこまでの青谷道は決して登山道ではない。

9:53
 JR三宮駅から神戸市バス2系統阪急六甲行き(18系統JR六甲道行きでもOK)に乗車し、青谷道バス停で降車。均一料金路線で200円、現金でもスルッとKANSAIカードでも、市バス・地下鉄共通NEW Uラインカードでも、市バス専用カードでも、PiTaPaでも、ICOCAでもOKだが、SUICAには対応していない。

青谷橋バス停で降車

 青谷道入口へは西郷川を遡ればよいが、青谷橋左岸側の小道に入り一度迷子になったことがある。バスを降りたら三宮方向に少し引き返してから、山側の道に入るとよいと思う。いっそ一つ手前の青谷バス停で降車し、「馬頭観音霊場 妙光院 この上200m」の案内表柱や「日本一 馬頭観音菩薩」の標石に従い妙光院方向へと進んだほうが間違いない。

9:18
馬頭観音霊場妙光院のさらに奥、西郷川にかかる摩耶橋を渡ると道が分かれ、左は登る道、右は下る道となっている。分岐点には「摩耶山青谷道 登山口」の案内があるので、ここまで来ることができればもう迷うハイカーはいない。

西郷川にかかる摩耶橋の先が青谷道の入口だ

9:23
摩耶橋から下流は西郷川、上流は青谷川と名が変わり、その左岸に通された道を登っていく。現役の滝行場、廃墟のような建物を左手に見ながら、軽トラのゴミ収集車が入るという狭い急なコンクリ舗装道を登る。

コンクリ舗装された狭い急な青谷道

9:32
 神戸市内唯一の茶畑、静香園。明治時代は灘区原田通から中央区割塚通一帯が茶畑で、神戸港から輸出されていたが、市街地となって消滅してしまった。ここは神戸の茶畑として、100年ぶりに昭和51年に開かれた(灘百選の案内板より)。茶葉を買い求めることや、園内の茶席でお茶も頂けるという(お茶まんじゅうセット500円、お茶セット250円)。

 一度入ってお茶を頂きたいが、今日のように通りかかっても気後れして、通り過ぎてしまう。

神戸市内唯一の茶畑 静香園

9:36
 幾度か通りかかったが、この曙茶屋が営業しているを見るのは初めてだ。六甲山カレーを極めることを人生の主命題としている私なのに、店に入りメニューを確かめる機会だったのに、常連客さんもいて気後れしてしまった。でも、入ってしまったら間違いなくビールいや熱燗なんかを注文してしまい、今日の目的を達成することはできなかっただろう。

青谷道のあけぼの茶屋

9:44
 この赤い幟が連なるのは「大龍院 成田不動明王」で、入口の赤い鳥居の先には滝行場があるのではないかと想像している。水量が比較的多い夏場の滝行は単なる水遊びになってしまうし、滝行に適した厳冬期は水量は減ってしまう。適度な水量の滝行のためには、水を溜めたしたり、さらには揚水式発電所ならぬ動力ポンプを用いた揚水式滝行場まで見たことがある。

大龍院 成田不動明王の幟が連なる


老婆谷の登山口は行者堂の裏から始まる

9:53
 青谷道と旧摩耶道(新神戸駅近くの雷声寺奥から始まる道)が合流する地点は、『行者茶屋跡』と呼ばれ、茶屋跡と推定される空き地には壊れた自販機とベンチがある。もういい加減に過去のしがらみから脱却し、ここに現に存在する「摩耶山行者堂」を呼び名にしてもよいのではないかと思う。

 老婆谷と行者尾根ルートは、摩耶山行者堂の裏側から始まっていが、現地には何一つ案内の類はなく、誰かに教えてもらわなければ絶対に行けないルートだ。単独ピクニック愛好者(その昔、「あなたは登山者じゃない。ただのハイカーだ」と言われたことがあるが、実は私はハイカーですらなくピクニック愛好者だと今でも思っている)にとって、インターネットは山遊び情報を仕入れる宝の山だ。

 けれどもマイナーなルートは少ないなりに情報があるが、逆に天狗道などのメジャールートの詳細な山行記録をアップする人はいない。みんな知っているだろうルートを自慢げにアップするのは恥ずかしいが、ハイキング初心者にとっては得難い情報なのだ。

老婆谷と行者尾根はこの摩耶山行者堂の裏から始まる

 摩耶山行者堂の左手から裏へ回り込むと渓流沿いの道となり、そこに架かる小橋を渡る。木製の踏み板は傷んでいるが、橋桁は鉄骨製なので危ないような安心のような橋だ。

渓流を渡り左岸へ

 橋を渡りそのまま渓流沿いを進めば滝行場があるという噂だが、抹香臭いのが大嫌いな私は行ったことがない。で、橋を渡ったほんのすぐ先で尾根へと登り始めるのだが、分岐点のマーキングが酷いことになっている。

小橋を渡ったすぐ先で尾根へ登り始める

 石を真っ赤に塗り『天狗道→』と白文字で書いた、分かりやすいといえば分かりやすいが、身も蓋もない直裁的な表現で、もう少し、いやもう99%どうにかならないものだろうか。

 例えば「天狗道→」くらいに目を凝らさなければ、事前に知っていなければ判らないようなのを、石の裏側に小さく書き込むとか、もっとキュートな手法をとれないものだろうか。

判りやすいが、なんだかなあの道標


行者尾根老婆谷分岐から老婆谷へ

10:02
落ち葉の積もった道をジグザグに九十九に登っていくと、地形的な特異点である尾根に至る。立ち木に赤スプレーでマーキングされているだけで明確な道標はないけれども、正面はこれから向かう老婆谷に続く道。左は行者尾根と呼ばれる、名前の通りに尾根らしさが満ち満ちた展望がよく少々のスリルも味わえる道。

 まあどちらも、六甲山のメジャールートしか歩いたことがないハイカーなら、道と言われても戸惑うようなものだが、まあ人が通らない山道とはこんなものなのだ。

老婆谷は直進、行者尾根は左へ尾根を登る

 尾根を超えると、あら不思議。もうそこは老婆谷の中。当たり前だが谷道なので、もうこの先は天狗道に登りきるまで展望は開けないし、見通しの効かない薄暗いマーキングもないどこへ続くのかも不確かな道を行くことになる。

 今回で老婆谷経験が3回目の私にとっては、何一つ感動も不安も感じられないが、最初はおっかなびっくりの、情報も少なく手探りの山行きだった。そんな非日常的な経験を得るには、誰かに連れられて登ったのではできず、一人で歩くに限る。単独山行で、おまけに人通りのないこのようなところで足を滑らしたら、もう大変。多数の人々を巻き込む遭難騒ぎになるのは目に見えているが、いや、人知れず朽ち果てるだけかな。でも一人山歩きをしてしまうと、もう止められない。

10:05
 六甲山の谷筋にもれなく付いてくるのが、砂防ダムだ。この老婆谷とてその例外ではなく、多数の砂防ダムが待ち構えているが、いずれもが小規模なもので巻き道もたいしたことはない。

 最初に現れたのは「昭和46年度 摩耶山国有林 老婆谷第2号コンクリート谷止 昭和興業K.K 林野庁 神戸営林署」という銘板が埋め込まれたもので、農林水産省管轄のものだ。

 至るところで見かける国土交通省管轄の近畿地方整備局六甲砂防事務所のもの、少なからず存在するのは兵庫県管轄の神戸県民局六甲治山事務所のだが、ハイカーにとってはどれもこれも行く手を遮ぎり、急な巻き道登りを強いられる存在だが、豪雨災害を防ぐために役立つものだ。

老婆谷第2号コンクリート谷止

10:09
 3年前はテープによるマーキングは皆無だったが(地籍調査によるものと思われる立ち木に赤スプレーはあった)、今回の山行では時たま見かけるようになってしまった。

 この播州野歩記の山行記録が、六甲山ハイキング業界にどの程度の影響力を及ぼしているかを知ることはできないが、今日も摩耶山上で声を掛けられたことから結構多くの人々に読まれているのは知っている。そして私の足跡を辿る方々が少なからずいることも薄々感じている。

 私は「とっていいのは写真だけ、残していいのは思い出だけ」教の中で「足跡も残してはいけない」派に属し、このようなマーキングは嫌いだ。でもその発端が「残していいのは思い出だけ」を実践するために綴ってきた播州野歩記だとしたら、悲しい。

ちらほらとマーキングが見かけられた

10:11
 一歩足を踏み外せば一気に老婆谷の底まで滑落し、人知れず白骨死体となること請け合いの断崖絶壁だ。でも道幅は十分だし堆積物も少なく、そしてその距離も短い。でも絶対に落ちることなどないのが分かっているのに、なぜか山際を歩いているのが我ながら可笑しい。

こんな断崖絶壁の道はほんの少し

10:13
 この簾のような物も砂防ダムだ。名前は「昭和47年度 摩耶山国有林 第4号鋼製堰堤 三和工営K.K 林野庁 神戸営林署」というもので小石は通すが岩は通さないというもので、巨岩が落ちてくればひとたまりもなさそうな華奢な砂防ダムだ。

第4号鋼製堰堤

10:21
 第4号鋼製堰堤までは谷底の右岸を登ってきたが、その先はちょっと離れる。明確な道形が続き、おそらく砂防工事のために通されたものではないかと思うが、どうなのだろうか。

谷から少し離れて道が続く

10;24
 円形に築かれた石積み跡がある。イギリスの直径100mもあるストーンヘンジの規模を思いっきり縮小したストーンサークル、環状列石遺跡だ。古代の祭祀場跡であることは誰の目にも明らかで、ここで木々を燃やすことによって木の精霊・火の精霊の力を我がものとしていたのだ。けして単なる炭焼窯跡ではない。

環状列石遺跡(ストーンサークルあるいは炭焼窯跡ともいう)


右岸から左岸へと渡るのはどこだったかな

10:28
 老婆谷右岸をそのまま登り詰めて行くと、道は消滅してしまう。天狗道へ至るにはどこかで左岸側に渡らなければならないが、そのポイントを捜すのに、このと刻まれた鉈目が重大な意味を持つ。(こんな言葉で検索に引っかかりたくないので、赤文字は画像にしている)

 下を覗き込むとマーキングがあり、ここで渡るのかと勘違いしてしまった。こんな風だったのかと3年前を思いだしてみるが、頭の中には「あれは3年前 止めるアナタ駅に残し♪動き始めた汽車にひとり飛び乗った♪」と関係ないフレーズが出てくるばかりで、肝心の3年前の記憶は忘却の彼方に消え去ってしまったようだ。

 ここを無理して渡ったが、対岸に続いているはずの道型は影も形もなく、おかしいなと急斜面を落ち葉に足をとられ木々にしがみつきながら彷徨うこと20分ほど。

の鉈目は谷を渡るポイントではありません

10:47
 20分の彷徨の結果、本当の左岸への渡渉(流れはすでにないが)ポイントを見つけるできた。から66歩登ったところで、谷も極浅く間単に渡ることができる。マーキングも付けられていて分かりやすいが、どう目を凝らしても対岸に道型を見出すことはできない。

ここが左岸に渡るポイント
流れはなく谷底の窪みもなく渡るのは簡単

10:51
 左岸側に渡ると、道型を見つけることができた。

対岸にも道型が残っている

10:54
 道型から東へ30mほど離れて巨岩が鎮座している。この岩は私が3年前に命名した「老婆が触れると乙女に若返る」という伝説が出来つつある老婆岩だ。中年から初老期につま先がかかっている私が触っても何事なかったが、精神年齢が5歳ほど若返ってしまった。

老婆が若返る老婆岩(noaruki命名)

10:58
 このような道型が天狗道へと続いているはずだが、油断すると九十九になっている道のユーターンポイントをそのまま直進してしまいがちなのか、それとも道型が落ち葉に隠されてしまうのか、いつの間にか道を外してしまう。

道型は明確で結構歩きやすい
(が、なぜか道から外れてしまう)

11:03
 で、道を外したシーン。もう天狗道までは残りわずかで、浅くなってきた谷を適当に登って行けば何とかなると分かっている。でも、3年前に初めてここまで登ってきたときは、真剣に引き返そうかなと悩んだことを思い出した。

道がない どうしよう

11:09
 そんな訳で、適当に登ってみる。いや、もう稜線らしきものが木々の隙間から見えているし、お空が一番低いところを目指し、確信をもって登っていく。

ここは何処なの 私は誰

11:12
 このまま道なき道が天狗道まで続いているかというと、そうではない。最後は道型に復帰する。

天狗道直下の老婆谷道

11:16
 老婆谷は展望はからきしだが、偶然一緒になった見知らぬ人とでもルート探索しながら登れば、礼文島の愛とロマンの8時間コースではないが、摩耶山掬星台に着くころには深い愛情と信頼に結ばれた一生涯の伴侶となるだろう。たとえ同性であったとしても。

 もう目の前は天狗道で、大勢のハイカーが行きかっている。

天狗道との合流5m手前
地蔵谷・黒岩尾根へ続くアドベンチャールートの分岐点でもある


 天狗道を登り掬星台、そして下山は「まやビューライン夢散歩」

11:25
 愛とロマンに満ち溢れた老婆谷に比べ、天狗道のなんと味気ないことか。でも、落ち葉に足をとられながら登った老婆谷と比べると、完璧に整備された道の歩き易さはルンルンだ。

天狗道は六甲山の超メジャールートではあるが
だらだらと長いだけで 途中に好展望地は少なく
歩いてみても詰まらないと 私は思う

11:28
 摩耶山山上に到着。ピークは無線中継所やテレビ送信所が占めている。サンテレビジョン摩耶山送信所・NHK摩耶山テレビFM放送所・民放の神戸テレビ送信所、そして警察庁摩耶山無線中継所・関西電力摩耶山中継所・auとアンテナ山になっている。

無線中継・テレビ送信所の鉄塔が林立する
摩耶山山上に到着

11:35
 日本三大夜景のうち1000万ドルの夜景として名高い掬星台の展望台だ。ちなみにあと二つは函館山から望む北海道函館市、稲佐山から望む長崎県長崎市の夜景だ。

 日本の夜景100選(2004年8月選定)というのもあり、兵庫県内では5ポイントが選ばれていて、摩耶山掬星台・六甲ガーデンテラス・ビーナスブリッジ・芦有ドライブウェイ東六甲展望台・淡路SA(下り線)となっている。

 さて、ここ摩耶山掬星台展望台において、播州野歩記のなかで最大のメインイベント『シェー!!』タイムを迎えた。渋谷のNHK放送センター102スタジオで披露したNHKBSプレミアム「熱中スタジアム 集え赤塚不二夫ファン」の雛壇最上段での『シェー!!』(平成23年4月30日収録、5月19日放送)以来、なんと半年もたってしまった。

摩耶山掬星台の展望台で『シェー!!』

ここで、試行錯誤のうえ会得した、自分撮りでの多画面合成によるアニメーションgifのコツを披露しよう。非常に単純なのだが、しっかりとした三脚を使い、絞りもシャッタースピードもピントも全てマニュアルモードで固定するとばっちりだ。そしてセルフタイマーでも可能だが、リモコンでシャッターが切ることが出来ればさらに簡単になる。

 下山は前述したように「まやビューライン夢散歩」を利用した楽チン下山だったが、元を取るためには、あと三回以上摩耶山に登らなくてはならない。



スポンサード リンク



山行記録にもどるホームにもどる本ページのトップ